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米国FDA:食品への使用を引き続き認める

葉山 莉子 葉山 莉子 • 更新: • 公開: • 読了約 17 分
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米国FDAは、二酸化チタンを食品用着色料として認可しています。

使用条件は、食品重量の1%以下です。FDAの規則21 CFR 73.575に基づき、食品の着色に使用できます。

ただし、米国でも使用継続をめぐる議論は続いています。

2023年4月14日、環境保護団体などがFDAに対し、食品への二酸化チタンの使用認可を取り消すよう請願しました。

2026年10月28日時点でも、この請願(CAP 3C0325)は審査中です。したがって、米国では使用禁止が決定したわけではなく、従来の認可条件が維持されています。

【2026年の重要な追加情報】EUの吸入発がん性分類は司法判断で覆っている

2026年時点で見落とせないのが、食品規制とは別に進んだEUの化学物質分類をめぐる裁判です。

EUは2020年、一定の粉末状二酸化チタンについて、吸入による発がん性カテゴリー2の分類を導入しました。

対象は、粉末中に空気力学的粒子径10μm以下の粒子が1%以上含まれる場合でした。

しかし、製造事業者などによる訴訟を受け、EU一般裁判所は2022年11月、この分類を一部取り消しました。

加えて、フランスと欧州委員会による上訴について、欧州司法裁判所は2025年8月1日に棄却する判決を下しています。

2025年12月10日付のEU官報でも、該当する粉末状二酸化チタンは、EUのCLP規則に基づく調和分類で吸入発がん性カテゴリー2の対象ではないことが通知されました。

ここで混同してはいけないのが、次の2つです。

- IARCのグループ2B:国際的な科学的発がん性評価。
- EUのCLP分類:化学物質の分類・表示に関する法的制度。

EUのCLP分類が取り消されたからといって、IARCのグループ2Bが取り消されたわけではありません。

また、この司法判断によって、EUの食品添加物E171禁止が撤回されたわけでもありません。

2026年の最新情報を読む際には、この3つを明確に分けて理解する必要があります。

【ナノ粒子とDNA損傷】酸化チタンが発がん性を疑われる本当の理由

酸化チタン発がん性

酸化チタンの発がん性をめぐる議論では、「ナノ粒子」「DNA損傷」「遺伝毒性」という言葉が頻繁に登場します。

これらはEFSAの2021年評価でも中心的な論点でした。

ナノ粒子は通常の酸化チタンと何が違う?

ナノ粒子とは、一般的に少なくとも一つの寸法が100ナノメートル未満の粒子を指します。

1ナノメートルは1メートルの10億分の1です。

同じ化学組成の物質でも、粒子が小さくなると、単位質量当たりの表面積や細胞との接触の仕方などが変わる場合があります。

酸化チタンの場合も、粒子径だけでなく、結晶構造、形状、表面処理、凝集状態などが安全性を評価する際の重要な要素になります。

二酸化チタンには、代表的な結晶構造として次の2種類があります。

- アナターゼ型: 光触媒特性などで知られる結晶形。
- ルチル型: 白色顔料や紫外線防御用途などに広く使用される結晶形。

ただし、アナターゼ型なら危険、ルチル型なら安全という単純な分類はできません。

粒子の性質や曝露条件を含めて評価する必要があります。

EFSAの2021年評価では、食品添加物E171にナノサイズの粒子が含まれることも検討対象になりました。EFSAの説明では、E171にはナノサイズの粒子が最大50%含まれる可能性があるとされています。

DNA損傷と遺伝毒性はどう違う?

遺伝毒性とは、物質がDNAや染色体などの遺伝情報に影響を与える性質です。

酸化チタンのナノ粒子については、研究によって次のような影響が報告されています。

- DNAの鎖が切断される可能性
- 染色体に損傷が生じる可能性
- 酸化ストレスを介した細胞への影響
- 細胞内への粒子の取り込み

EFSAが2021年に公表した科学的評価では、二酸化チタン粒子がDNA鎖の切断や染色体損傷を引き起こす可能性が示されました。

一方で、遺伝子突然変異を引き起こす証拠は確認されていませんでした。

また、粒子の大きさや結晶形、形状、凝集状態と遺伝毒性試験の結果との間にも、明確で一貫した相関関係は見つかっていません。

つまり、DNA損傷の可能性が研究で示されたことと、通常の食品摂取によってヒトにがんが発生することが証明されたことは、まったく別の話です。

なぜEFSAとJECFAで評価が分かれたのか?

両機関の判断の違いを理解するには、試験材料の性状と試験方法に注目する必要があります。

EFSAは、複数の研究結果と不確実性を総合し、遺伝毒性の懸念を排除できないと判断しました。

一方、JECFAは、食品添加物として使われるINS171と、実験で使用されたナノ粒子などの試験材料の違いを重視しました。

加えて、難溶性粒子状物質に対する遺伝毒性試験には、方法論上の課題があります。

例えば、試験で陽性結果が出ても、その粒子が実際の食品摂取によってヒトの標的組織に十分な量まで到達するのかという問題が残ります。

日本の2023年評価でも、試験材料の性状が不明な研究や、食品添加物グレードの粒子との比較が難しい研究について検討されました。

このような科学的な解釈の違いが、EFSAとJECFA、日本の判断を分けた背景です。

【化粧品・日焼け止めは大丈夫?】酸化チタンの発がん性と使用上の注意

酸化チタンは食品だけでなく、化粧品や日焼け止めにも使用されています。

白色顔料としての役割に加え、紫外線を散乱・反射する性質を利用した紫外線防御成分としても知られています。

ここで重要なのは、肌に塗ることと、空気中に浮遊した粒子を吸い込むことは別の曝露経路だという点です。

1.日焼け止めやクリームは吸入リスクと区別する

肌に塗るタイプの化粧品では、酸化チタンが皮膚からどの程度吸収されるかが重要になります。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、法的要件に適合した化粧品について、消費者の健康に有害な影響があることを示す兆候はないと説明しています。

また、酸化チタンのナノ粒子についても、これまでの評価では、健康な皮膚や日焼けした皮膚からの吸収は懸念されていません。

EUの消費者安全科学委員会(SCCS)も、2024年の科学的助言において、過去に評価した皮膚塗布型化粧品の安全性に関する見解は変更しないとしています。

ただし、この判断は評価済みの粒子や表面処理などの条件に基づくものであり、あらゆる酸化チタン製品に無条件で適用できるわけではありません。

2.スプレーやエアゾールは吸入に注意

一方、スプレータイプの化粧品では、噴霧された微細な粒子を吸い込む可能性があります。

この点について、SCCSは2020年10月6日に、吸入曝露につながる化粧品中の酸化チタンについて最終評価を公表しました。

具体的には、次のような判断を示しています。

- 酸化チタンを25%含む一般的なヘアスタイリング用エアゾールスプレーは、一般消費者と美容師の双方にとって安全ではない。
- 顔用メイクアップのルースパウダーについては、評価対象となった条件で25%まで使用する場合、一般消費者には安全と判断された。

同じ酸化チタンでも、製品の形状や使用方法、吸入される量によって評価が変わることが分かります。

※ルースパウダーに関する評価は、特定の製品条件と一般消費者の曝露を対象としたものであり、すべての粉末化粧品や業務用使用の安全性を保証するものではありません。

3.2026年のEU化粧品規制はどうなっている?

2026年のEU化粧品規制でも、二酸化チタンは紫外線フィルターとして一定の条件下で使用が認められています。

ECHAが公表する2026年の化粧品用紫外線フィルター情報では、通常の二酸化チタンとナノ形態の二酸化チタンについて、それぞれ最大25%という濃度条件が示されています。

ただし、ナノ形態については、使用者の肺が吸入曝露を受ける可能性のある用途には使用できないという制限があります。

つまり、EUの食品添加物禁止と化粧品規制は別々に運用されています。

4.歯磨き粉など口腔用化粧品は別の論点がある

もう一つ見落とせないのが、歯磨き粉や口腔ケア製品です。

2024年5月、SCCSは酸化チタンを含む口腔用化粧品について、追加の科学的助言を公表しました。

この評価では、対象となったほとんどの酸化チタングレードについて、遺伝毒性の可能性を排除するには証拠が不十分と判断されています。

ただし、歯磨き粉などは食品添加物のように食べることを目的とした製品ではありません。口からの意図しない摂取量は、食品添加物として摂取する場合よりも少ないと想定されます。

一方で、口腔粘膜への粒子の取り込みや、毎日の繰り返し使用については、追加の検証が必要とされています。

したがって、化粧品については次のように整理できます。

- クリームや日焼け止めなどの皮膚塗布:吸入リスクとは区別して評価する。
- エアゾールスプレー:肺への吸入曝露に注意する。
- 粉末化粧品:粒子の飛散や吸入の可能性を確認する。
- 歯磨き粉など:口腔粘膜への曝露や意図しない摂取について、別途検討が必要。

【プロの結論】酸化チタンの発がん性を判断する5つの基準

2026年の最新情報を総合すると、酸化チタンについて「危険だからすべて避けるべき」「安全だから何も気にしなくてよい」という両極端な判断は適切ではありません。

実際のリスクを見極めるためには、次の5つの基準が役立ちます。

基準1:体内に入る経路を確認する

最も優先したいのが曝露経路です。

粉じんを吸い込む場合と、食品から経口摂取する場合では、体内での挙動が異なります。

IARCのグループ2Bを見て食品や日焼け止めまで一律に危険と判断するのは、評価対象を取り違えています。

基準2:粒子の大きさと性質を確認する

ナノ粒子と一般的な顔料グレードの粒子では、物理化学的性質が異なる場合があります。

粒子径だけでなく、結晶構造、表面処理、凝集状態なども安全性に関係します。

「酸化チタン」という名称だけでは、実際の曝露リスクを十分に判断できません。

基準3:曝露量と期間を考える

短期間に少量触れることと、長期間にわたり高濃度の粉じんを吸い込むことは同じではありません。

特に製造現場では、作業頻度、粉じん濃度、換気状況、個人用保護具の使用状況などが重要です。

基準4:評価機関の役割を区別する

IARCは発がん性の危険性を評価する機関です。

EFSAやJECFAは、食品添加物としての安全性を評価します。

各国政府は、それらの科学的評価を踏まえて使用規制を決定します。

評価機関の結論と、実際の法律上の使用可否を同じものとして扱わないことが大切です。

基準5:2026年時点の最新規制を確認する

規制は国によって異なります。

日本では指定添加物として使用が認められていますが、EUでは食品へのE171使用は禁止されています。米国ではFDAの認可条件に従って使用できる一方、取り消し請願の審査が続いています。

また、2025年のEU司法判断によるCLP分類の取り消しと、IARCの発がん性評価は別問題です。

このように、科学的知見と法的規制を分けて確認することが、正しい判断につながります。

日本で生活する消費者・作業者ができること

一般消費者の場合

日本で通常販売されている食品について、酸化チタンの表示だけを理由に過度な不安を抱く必要はありません。

一方、EFSAが指摘した遺伝毒性の不確実性を気にする場合は、原材料・添加物表示を確認し、二酸化チタンを含まない商品を選ぶという判断もできます。

化粧品を使用する場合

日焼け止めやクリームなど、肌に塗る製品と、吸入する可能性のあるスプレーや粉末製品を区別してください。

吸入を避けたい場合は、飛散しやすい製品の使い方に注意することが合理的です。

製造現場で働く場合

粉末を扱う作業では、粉じんの発生を抑える設備、局所排気、適切な保護具などを組み合わせることが大切です。

安全データシート(SDS)や職場のリスクアセスメントに基づいた管理が大切です。

【酸化チタンの発がん性】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:酸化チタン入りの食品を食べると、がんになりますか?

A1:食品からの通常の経口摂取によって、ヒトにがんが発生することを示す決定的な証拠は確認されていません。JECFAは2023年に食品添加物INS171の安全性を再評価し、ADI「not specified」を再確認しました。一方、EFSAは2021年に遺伝毒性の懸念を排除できないと判断しており、評価機関によって見解が異なります。

Q2:日本では酸化チタンを食品添加物として使用できますか?

A2:2026年10月時点で、二酸化チタンは日本の指定添加物リストに掲載されています。着色料としての使用が認められていますが、カステラ、きなこ、しょうゆ、食肉、茶、のり類、豆類、みそ、めん類、野菜など、使用が禁止されている食品もあります。

Q3:酸化チタン入りの日焼け止めは発がん性がありますか?

A3:肌に塗るタイプの日焼け止めについては、皮膚からの吸収が少ないことなどから、評価済みの製品条件では安全性上の懸念は低いとされています。ただし、スプレーや粉末など、粒子を吸い込む可能性のある製品は別の注意が必要です。

Q4:EUが酸化チタンを禁止したのは、発がん性が証明されたからですか?

A4:発がん性が証明されたからではありません。EFSAが食品添加物E171の遺伝毒性への懸念を排除できないと判断したことを受け、欧州委員会が食品への使用認可を取り消しました。これは予防的な食品規制上の判断であり、ヒトへの発がん性が確定したという意味ではありません。

まとめ:酸化チタンの発がん性は曝露経路と最新の科学的評価で判断する

酸化チタン(二酸化チタン)の発がん性をめぐる議論は、IARCのグループ2B分類、EFSAの遺伝毒性評価、JECFAの2023年再評価、日本の安全性評価、EUのE171禁止など、複数の科学的・行政的判断が重なって形成されています。

2026年10月時点で押さえておきたいのは、IARCのグループ2Bが粉じんの吸入に関する評価であり、食品からの経口摂取にそのまま適用できないという点です。

EFSAは遺伝毒性の懸念を排除できないと判断しましたが、JECFAは食品添加物としてのINS171について説得力のある遺伝毒性の証拠を認めず、日本の2023年評価も直ちに使用を中止する必要はないとの結論を示しました。

一方、EUは食品への使用を禁止し、米国は1%以下という条件で使用を認めながら、規制の見直しをめぐる請願を審査しています。さらに2025年にはEUの吸入発がん性に関するCLP分類が司法判断で取り消されましたが、IARCの評価や食品添加物規制とは別の問題です。

最も重要なのは、酸化チタンという物質名だけで危険性を決めつけないことです。 吸入か経口か、粒子の性質は何か、どの程度の量にどれほどの期間さらされるのか。これらを確認することが、酸化チタンの発がん性を正しく理解し、日常生活や仕事で適切な判断をするための基本になります。

主な参照資料:IARCモノグラフ第93巻、EFSA 2021年安全性評価、WHO・FAO/JECFA第97回会合資料、厚生労働省・国立医薬品食品衛生研究所の2023年評価資料、欧州委員会規則(EU)2022/63、FDA食品用着色料規則、EU司法裁判所2025年判決。

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葉山 莉子

美容・ファッション担当として8年以上の取材経験。beauty領域の公式発表・配信元の告知を一次情報として確認し、確認できない情報は記事に含めない方針です。

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