サイヤング賞(サイ・ヤング賞)とは、アメリカのプロ野球リーグであるメジャーリーグベースボール(MLB)において、そのシーズンに最も優れた投手に贈られる栄誉ある賞です。ナショナルリーグ(NL)とアメリカンリーグ(AL)でそれぞれ1人ずつ選出され、全米野球記者協会(BBWAA)に所属する記者の投票によって受賞者が決まります。
2026年10月30日時点で、発表済みの直近の受賞者は2025年シーズンのアメリカンリーグがタリック・スクーバル、ナショナルリーグがポール・スキーンズです。また、歴代最多受賞記録を持つのは、通算7度の受賞を達成したロジャー・クレメンスです。賞の意味や選考基準、投票の仕組み、歴史的な記録を知ることで、MLBにおける投手の評価基準がより明確になります。
【基本知識】サイ・ヤング賞とは?MLB最高峰の投手賞の意味

サイ・ヤング賞は、英語で「Cy Young Award」と表記されるMLBの年間表彰制度です。
簡単に説明すると、1年間を通じて最も優れた成績を残した投手を選ぶ賞です。打者を対象とする表彰とは異なり、投手としての実力やシーズンを通じた貢献度が評価の中心になります。
サイ・ヤング賞は両リーグから1人ずつ選ばれる
MLBには、アメリカンリーグ(AL)とナショナルリーグ(NL)という2つのリーグがあります。
サイ・ヤング賞は、この2つのリーグで独立して選考されます。
つまり、毎年の受賞者は原則として次の2人です。
- アメリカンリーグの最優秀投手:1人
- ナショナルリーグの最優秀投手:1人
両リーグの投手を一括して比較するのではなく、それぞれのリーグ内で年間最優秀投手を決定する仕組みです。
そのため、同じシーズンに両リーグから2人の歴史的な投手が選ばれることもあります。
賞の名前は伝説的投手サイ・ヤングに由来
賞の名称に使われているサイ・ヤングは、19世紀末から20世紀初頭に活躍した伝説的な投手です。
MLB公式の歴史解説によると、サイ・ヤングは1911年に現役を引退するまでに通算511勝を記録しました。この数字は現在もMLB歴代最多勝利記録として残っています。
加えて、通算完投数や投球回数などでも歴史的な記録を保持しており、野球史における偉大な投手の象徴的存在です。
その功績をたたえ、1956年に創設された投手表彰制度に彼の名前が付けられました。
単なる年間タイトルではなく、野球史に残る名投手の功績を受け継ぐ賞という意味も持っています。
【選考基準】サイ・ヤング賞は何を基準に決まる?評価される成績を解説
サイ・ヤング賞の選考で気になるのが、どのような成績を残せば受賞できるのかという点です。
結論からいうと、特定の勝利数や防御率を達成すれば自動的に受賞できる制度ではありません。
記者がシーズン全体の投球内容を評価し、総合的に判断します。
重要視される主な投手成績
代表的な評価指標には、次のようなものがあります。
1. 防御率(ERA)
投手が9イニングを投げた場合に、平均して何点の自責点を許すかを示す指標です。
基本的には数値が低いほど優秀で、失点を抑える能力を評価する際の重要な材料になります。
2. 奪三振数
打者を三振に仕留めた回数です。
強力な打者を相手にアウトを奪う能力や、投手自身が試合を支配する力を判断する材料になります。
3. 投球回数
1シーズンにどれだけのイニングを投げたかを示します。
先発投手の場合、優れた防御率を維持するだけでなく、長いイニングを投げてチームの負担を減らすことも評価につながります。
4. WHIP
1イニング当たりに許した与四球と被安打の合計を示す指標です。
走者をどれだけ出さずに投球できたかを把握する際に役立ちます。
5. シーズンを通じた安定感
一時的な好成績だけでなく、シーズンを通じて高いレベルの投球を継続できたかも重要です。
近年は、FIPやWARなどのセイバーメトリクスも投手の実力を分析する材料として活用されています。
ただし、これらの指標に公式の固定配点が設定されているわけではありません。
勝利数が少なくても受賞できる?
できます。
ここはサイ・ヤング賞を理解するうえで要点です。
以前は投手の勝利数が選考で大きな存在感を持っていました。しかし、勝利数は投手個人の能力だけで決まる数字ではありません。
味方打線の援護や守備、救援投手の働きなどにも左右されます。
そのため、勝敗だけで投手の優劣を判断することはできません。
実例が2025年のナショナルリーグです。
ポール・スキーンズは10勝10敗という勝敗成績でしたが、防御率1.97、216奪三振という圧倒的な投球内容を残し、サイ・ヤング賞を獲得しました。
しかも、30人の投票者全員から1位票を獲得する満票受賞でした。
この結果は、勝利数だけでは投手の価値を測れないことを示す代表例です。
中継ぎ投手や抑え投手も受賞できる
サイ・ヤング賞は先発投手だけの賞ではありません。
中継ぎ投手やクローザーも受賞対象です。
実際に、1981年のローリー・フィンガーズや1992年のデニス・エカーズリーは、救援投手として同賞を獲得しています。
先発投手と救援投手では登板回数や役割が異なるため、単純に投球回数だけで比較することはできません。
投手としてチームにどれほどの価値をもたらしたかという視点が大切です。
【投票方式】サイ・ヤング賞は誰が決める?記者投票の仕組み
サイ・ヤング賞の受賞者を決定するのは、全米野球記者協会(BBWAA)です。
MLBの監督や選手、ファンによる人気投票ではありません。
投票するのは各リーグ30人の記者
BBWAAの公式投票FAQによると、各リーグの年間表彰では、MLB各都市から推薦・承認された記者が投票に参加します。
基本的な構成は次のとおりです。
- 各リーグの投票者:30人
- 投票者:各都市から選ばれた記者
- 投票対象:同じリーグの投手
- 投票時期:ポストシーズン開始前
アメリカンリーグの記者はアメリカンリーグの賞に、ナショナルリーグの記者はナショナルリーグの賞に投票します。
1位から5位まで順位を付けるポイント方式
現在のサイ・ヤング賞では、投票者が候補者を1位から5位まで順位付けします。
獲得できる要点は次のとおりです。
| 投票順位 | 獲得ポイント |
|---|---|
| 1位 | 7ポイント |
| 2位 | 4ポイント |
| 3位 | 3ポイント |
| 4位 | 2ポイント |
| 5位 | 1ポイント |
各投票者の順位に応じてポイントが加算され、最終的な合計ポイントが最も多い投手が受賞します。
例えば、30人全員が同じ投手を1位に選んだ場合、その投手は210ポイントを獲得します。
2025年のナショナルリーグでは、ポール・スキーンズが実際に30人全員から1位票を獲得し、210ポイントで満票受賞を達成しました。
投票結果は受賞者発表前に集計される
投票はレギュラーシーズン終了後、ポストシーズンが始まる前に実施されます。
つまり、ワールドシリーズなどのポストシーズンで活躍したかどうかは、基本的にサイ・ヤング賞の選考対象ではありません。
評価されるのはレギュラーシーズンの成績です。
また、BBWAAは2012年から各賞の投票結果を公開するようになりました。
そのため、受賞者だけでなく、誰が何位に評価されたのか、ポイント差がどれほどあったのかも確認できます。
【歴代記録】ロジャー・クレメンスが最多7度受賞!歴代の名投手を比較
サイ・ヤング賞の歴代受賞者を振り返ると、MLBを代表する数々の名投手が並びます。
その中でも、突出した記録を持つのがロジャー・クレメンスです。
ロジャー・クレメンスの通算7度受賞は歴代最多
ロジャー・クレメンスは、サイ・ヤング賞を通算7度獲得した歴代最多受賞者です。
受賞したシーズンは以下のとおりです。
- 1986年
- 1987年
- 1991年
- 1997年
- 1998年
- 2001年
- 2004年
ボストン・レッドソックス、トロント・ブルージェイズ、ニューヨーク・ヤンキース、ヒューストン・アストロズの4球団で受賞しています。
アメリカンリーグだけでなく、ナショナルリーグでも受賞した点も特徴です。
複数の球団、異なる時代、異なるリーグで結果を残したことは、彼の実績を際立たせています。
歴代の複数回受賞者と記録
クレメンス以外にも、複数回受賞を達成した投手がいます。
| 投手名 | 受賞回数 | 主な受賞年 |
|---|---|---|
| ロジャー・クレメンス | 7回 | 1986、1987、1991、1997、1998、2001、2004 |
| ランディ・ジョンソン | 5回 | 1995、1999~2002 |
| スティーブ・カールトン | 4回 | 1972、1977、1980、1982 |
| グレッグ・マダックス | 4回 | 1992~1995 |
| サンディ・コーファックス | 3回 | 1963、1965、1966 |
| ペドロ・マルティネス | 3回 | 1997、1999、2000 |
| トム・シーバー | 3回 | 1969、1973、1975 |
| ジャスティン・バーランダー | 3回 | 2011、2019、2022 |
この記録からも、サイ・ヤング賞を複数回獲得することがいかに難しいかが分かります。
特にランディ・ジョンソンは、1999年から2002年まで4年連続で受賞しました。
グレッグ・マダックスも1992年から1995年まで4年連続で受賞しており、継続的な支配力を示した投手として知られています。
2025年の最新受賞者はスクーバルとスキーンズ
2025年シーズンの受賞者は次の2人です。
アメリカンリーグ:タリック・スクーバル
デトロイト・タイガースの左腕タリック・スクーバルは、防御率2.21、241奪三振、195回1/3の投球回数を記録しました。
2024年に続く2年連続の受賞であり、アメリカンリーグでは圧倒的な存在感を示しました。
ナショナルリーグ:ポール・スキーンズ
ピッツバーグ・パイレーツのポール・スキーンズは、防御率1.97、216奪三振、187回2/3の投球回数を記録しました。
30人全員から1位票を獲得する満票受賞となり、ナショナルリーグを代表する投手として評価されました。
2026年10月30日時点では、2026年シーズンの受賞者発表前であり、この2人が発表済みの直近の受賞者です。
【徹底比較】サイ・ヤング賞とMVPの違いは?両方受賞できる?
MLBの表彰制度を理解するうえで、サイ・ヤング賞とMVPの違いも押さえておきたいポイントです。
どちらも全米野球記者協会が選考する重要な賞ですが、評価する対象と目的が異なります。
サイ・ヤング賞は投手、MVPはリーグ全体の選手が対象
主な違いは次のとおりです。
| 比較項目 | サイ・ヤング賞 | MVP |
|---|---|---|
| 正式名称 | Cy Young Award | Most Valuable Player Award |
| 日本語 | 最優秀投手賞 | 最優秀選手賞 |
| 対象 | 投手 | 投手・野手など全選手 |
| 選出人数 | 各リーグ1人 | 各リーグ1人 |
| 投票者 | BBWAAの記者 | BBWAAの記者 |
| 投票順位 | 1位~5位 | 1位~10位 |
| 1位のポイント | 7ポイント | 14ポイント |
| 評価の中心 | 投手としてのシーズン成績 | チームに対する選手の総合的な価値 |
MVPは、打撃や守備、走塁、投球などを含め、チームにどれだけ貢献したかを評価する賞です。
BBWAAの公式投票規定では、MVPについて投手や指名打者も選考対象に含まれています。
一方、サイ・ヤング賞は投手に対象を限定した表彰です。
投手がサイ・ヤング賞とMVPを同時受賞することもある
両方の賞は別々に選考されるため、同じ選手が同一シーズンに受賞することも可能です。
歴史的な例が1956年のドン・ニューカムです。
彼はサイ・ヤング賞の初代受賞者であり、同じシーズンにナショナルリーグのMVPも獲得しました。
これは、投手として優れているだけでなく、リーグ全体でも最も価値のある選手と評価される可能性があることを示しています。
ただし、サイ・ヤング賞を獲得したからといって、必ずMVPも獲得できるわけではありません。
評価の目的が異なるため、両者の結果が分かれることも珍しくありません。
【プロの結論】サイ・ヤング賞の本当の価値は投手の総合力にある
サイ・ヤング賞を理解するうえで大切なのは、単純な勝利数ランキングとして捉えないことです。
防御率や奪三振数はもちろん、投球回数、安定性、対戦相手のレベル、試合への影響力など、さまざまな要素が投手の評価に関係します。
特に現代MLBでは、勝敗だけでは測れない投手の能力を数値化する分析手法が発達しています。
2025年のポール・スキーンズが10勝10敗ながら満票で受賞したことは、その変化を象徴する事例です。
また、ロジャー・クレメンスの7度受賞という記録は、単年の圧倒的な活躍だけでなく、長いキャリアにわたって最高水準の投球を続けることの難しさも物語っています。
MLBの試合やニュースをより深く楽しみたい人は、受賞者の名前だけでなく、防御率、奪三振数、WHIP、投球回数、投票結果まで確認すると、選考の背景が理解しやすくなります。
【よくある質問】サイ・ヤング賞に関するFAQ
Q1:サイ・ヤング賞は毎年何人が受賞しますか?
A1:現在はアメリカンリーグとナショナルリーグから、それぞれ1人ずつ選出されます。原則として年間2人が受賞します。
Q2:サイ・ヤング賞の最多受賞者は誰ですか?
A2:ロジャー・クレメンスです。1986年から2004年までの間に通算7度受賞しており、MLB歴代最多記録を保持しています。
Q3:サイ・ヤング賞はどのような投票方式で決まりますか?
A3:全米野球記者協会の記者が各リーグで投票します。候補者を1位から5位まで順位付けし、1位7点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点として集計します。
Q4:防御率が最も低い投手が必ず受賞しますか?
A4:必ずしもそうではありません。防御率は重要な評価材料ですが、奪三振数、投球回数、WHIP、シーズン全体の安定性なども考慮されます。
Q5:中継ぎ投手や抑え投手もサイ・ヤング賞を獲得できますか?
A5:獲得できます。1981年のローリー・フィンガーズや1992年のデニス・エカーズリーなど、救援投手として受賞した選手もいます。
Q6:サイ・ヤング賞とMVPは同時に受賞できますか?
A6:可能です。両賞は別々に選考されます。1956年には初代受賞者のドン・ニューカムがサイ・ヤング賞とナショナルリーグMVPを同時受賞しています。
まとめ:サイ・ヤング賞はMLBを代表する投手の最高峰の栄誉
サイ・ヤング賞とは、MLBのアメリカンリーグとナショナルリーグで、それぞれ年間最優秀投手を選出する歴史ある表彰制度です。
1956年の創設以来、多くの名投手が受賞してきました。現在もロジャー・クレメンスの通算7度という記録は歴代最多として残っています。
選考は全米野球記者協会の記者投票によって行われ、単純な勝利数だけではなく、防御率や奪三振数、投球回数などを含めた総合的な評価が行われます。
2025年にはアメリカンリーグでタリック・スクーバル、ナショナルリーグでポール・スキーンズが受賞しました。
今後のMLBを見る際には、両リーグのエースたちがどのような成績を残し、どのような評価を受けるのかにも注目してみてください。サイ・ヤング賞の仕組みを知ることで、投手の活躍やMLBの歴史をさらに深く楽しめます。
主な根拠資料
- MLB公式・歴代受賞者一覧、賞の歴史と創設経緯:
- 全米野球記者協会(BBWAA)公式・投票方式と配点:
- MLB公式・2025年の受賞者と投票結果:
- MLB公式・歴代最多受賞者の記録: