「長年連れ添った夫婦は、顔までそっくりになってくる」――。テレビやSNSでもたびたび話題になるこの説には、実は心理学や認知科学の研究による興味深い検証結果がある。2026年10月現在、特に注目したいのが、結婚当初と20~69年後の夫婦の写真を比較した517組の夫婦を対象とする2020年の研究だ。調査では、夫婦は結婚当初から顔が似ている傾向にある一方、長年一緒に暮らすことで顔がさらに似ていくという明確な証拠は確認されなかった。
加えて、日本人夫婦を対象とした研究でも、結婚後に顔の類似性が高まる傾向は認められていない。ただし、人間による主観的な判断と顔認識アルゴリズムによる評価では結果に違いが生じている。そもそも、なぜ似た顔の相手に惹かれるのか。性格や価値観、生活習慣、表情やしぐさは夫婦の見た目にどのような影響を与えるのか。心理学と実証研究をもとに、夫婦の顔が似る現象の正体を詳しく解説する。
【517組の夫婦を調査】顔が似てる夫婦は結婚当初から似ていた?

夫婦の顔が似ているという現象を考えるうえで、重要な研究が2020年10月12日に学術誌「Scientific Reports」に掲載された。研究を行ったのは、スタンフォード大学のPin Pin Tea-makorn氏とMichal Kosinski氏だ。
論文のタイトルは「Spouses’ faces are similar but do not become more similar with time」。日本語にすると「夫婦の顔は似ているが、時間とともにさらに似ていくわけではない」という意味になる。
この研究の画期的な点は、単に夫婦と他人の顔を比較したのではなく、同じ夫婦について結婚当初と長い年月が経過した後の写真を比較したことだ。
517組の夫婦を20~69年にわたって比較
研究では、517組の異性愛夫婦について、結婚から2年以内に撮影された写真と、結婚から20~69年後に撮影された写真を収集した。
写真の平均的な婚姻期間は約49年。新聞の結婚記念日記事や公開プロフィールなどから画像を集め、結婚当初と長期間経過した後の顔を比較できるようにした。
評価には、153人の人間による顔の類似性判断と、VGGFace2という顔認識アルゴリズムを利用した2種類の方法が採用された。
人間の判断だけに頼らず、コンピューターによる顔の特徴量の比較も取り入れた点が、この研究の大きな特徴である。
結婚当初から夫婦の顔は似ていた
研究結果では、結婚当初の夫婦について、人間による評価も顔認識アルゴリズムによる評価も、夫婦の顔がランダムに組み合わせた男女より似ていることを示した。
人間による評価では、配偶者の顔が候補となる6人の中で最も似ているかを順位付けした際、平均順位は2.75だった。顔認識アルゴリズムによる平均順位は2.89である。
なお、この順位は1が最も似ている、6が最も似ていないことを意味する。ランダムに組み合わせた場合に期待される平均順位3.5よりも低く、夫婦の顔の類似性を支持する結果となった。
つまり、長い結婚生活を送った後だから似ているのではなく、少なくとも研究対象となった夫婦では、結婚した時点ですでに顔が似ている傾向があったのだ。
結婚後に顔が似てくる説は支持されなかった
さらに重要なのは、結婚当初と20~69年後を比較した結果だ。
研究では、夫婦の顔の類似性が時間の経過によって増加するという仮説を支持する結果は得られなかった。人間による評価では、むしろ類似性がわずかに低下する結果も出たが、その差は小さく、顔認識アルゴリズムでは同様の低下は確認されていない。
したがって、この研究から読み取れるのは、夫婦の顔が似ている傾向はあるものの、結婚生活によって顔が徐々に似ていくとは確認できないということだ。
ただし、研究に使われた写真は公開情報から収集されたもので、撮影条件や身だしなみを完全に統一したものではない。あらゆる夫婦に当てはまる絶対的な法則ではなく、研究対象と測定方法の範囲内で解釈する必要がある。
【日本人夫婦の調査結果】結婚後に顔が似る説は日本でも当てはまらない?
517組の研究で気になるのは、対象者が白人の異性愛夫婦に限られていたことだ。顔の形状や文化的背景が異なる日本人にも同じ傾向が見られるのかという疑問が残る。
この点を検討した研究が、木更津工業高等専門学校の能城沙織氏らによる、日本人夫婦の顔の類似性に関する一連の研究である。
2023年の研究で日本人夫婦の経年変化を検証
2023年の日本認知科学会第40回大会では、能城沙織氏と國岡桃子氏による「ヒトの顔に関する同類婚についての実証実験:時間が経過するにつれて夫婦の顔は似ていくのか?」が発表された。
この研究では、日本人を対象に、配偶者選択によって最初から顔が似ているのか、それとも結婚後の共同生活によって顔が似ていくのかという問題が検討された。
研究概要では、日本人夫婦についても時間の経過による顔の類似性の増加は認められなかったと報告されている。
2024年の研究では人間とAIの評価に違い
さらに2024年の日本認知科学会第41回大会では、能城沙織氏による「ヒトの顔に関する同類婚:顔類似性評価実験及び顔認識アルゴリズムを用いた類似性評価」が発表された。
この研究では、日本人の夫婦20組の写真を使い、結婚当初と結婚後6~46年が経過した時点の顔を比較している。写真の撮影期間は平均20.6年だった。
評価には、若い世代の実験参加者による主観的な顔の類似性判断と、VGGFace2を用いた顔認識アルゴリズムによる比較が採用された。
結果は興味深い。人間による主観的な判断では、結婚当初も時間経過後も夫婦の顔が似ているという傾向が認められた。一方、顔認識アルゴリズムでは、夫婦の顔がランダムな組み合わせより似ているという結果は確認されなかった。
しかし、両方の評価方法に共通していたのが、結婚後に夫婦の顔がさらに似ていく傾向は確認されなかったという点である。
研究結果を時系列で比較
これまでの主要な研究を整理すると、次のようになる。
| 研究・発表年 | 対象・調査内容 | 主な結果 |
|---|---|---|
| 1987年 | Zajoncらによる12組の夫婦の研究 | 結婚後に顔が似てくるという仮説を提示 |
| 2012年 | 能城沙織氏らによる顔の同類婚研究 | 夫婦の顔の類似性と自己参照的な顔の選好との関連を示唆 |
| 2020年 | Tea-makorn氏らによる517組の夫婦の研究 | 結婚当初から似ている傾向があるが、時間経過による増加は確認されず |
| 2023年 | 日本人夫婦を対象とした研究発表 | 日本人でも経年による顔の類似性の増加は認められず |
| 2024年 | 日本人夫婦20組の顔画像を比較 | 人間とAIで類似性評価に差がある一方、経年による増加は確認されず |
この比較から分かるのは、夫婦の顔が似ているという現象と、結婚後に顔が似てくるという現象は、分けて考える必要があるということだ。
特に日本人を対象とした2024年の研究は、サンプル数が20組と少なく、顔認識アルゴリズムと人間の判断にも違いがあった。日本人全体に同じ傾向があると断定できる段階ではないものの、517組の研究と同じく、結婚後の顔の類似性の増加を支持しない結果となっている。
【なぜ似た顔の相手を選ぶ?】心理学で見る同類婚と顔の類似性
結婚後に顔が似てくるという説が十分に支持されていないなら、なぜ最初から顔が似ている夫婦が存在するのだろうか。
その説明として研究されているのが、心理学や進化心理学で扱われる同類婚(Homogamy)という現象だ。
同類婚とは、年齢、学歴、価値観、社会的背景、身体的特徴など、何らかの共通点を持つ人同士がパートナーになる傾向を指す。
理由1:自分に似た顔に親近感を持つ心理
顔の類似性に関する重要な研究の一つが、2012年に学術誌「Human Nature」に掲載された、能城沙織氏、田村聡氏、井原泰雄氏による研究だ。
論文のタイトルは「Human homogamy in facial characteristics: Does a sexual-imprinting-like mechanism play a role?」。人間の顔の特徴における同類婚と、性的刷り込みに似た仕組みの関係を調べた研究である。
この研究では、夫婦やその家族の顔を比較し、人間が自分自身に似た顔を持つ相手を選ぶ傾向があるかを検討した。
その結果、夫婦の顔には同類婚的な傾向が見られ、その要因として自己参照的な表現型マッチングが主に関係している可能性が示された。
自己参照的な表現型マッチングとは、自分自身の身体的特徴と似た特徴を持つ相手を認識し、好ましく感じる可能性を指す。
例えば、顔の輪郭や目鼻立ちなどに共通点がある相手に、無意識のうちに親近感を抱くという仕組みが考えられる。
ただし、これは誰もが自分にそっくりな相手を恋愛対象として好むという意味ではない。研究が示しているのは、顔の類似性と配偶者選択の間に関連する傾向があるということだ。
理由2:幼少期に接した家族の顔が影響する可能性
同じ2012年の研究では、もう一つ興味深い可能性が示されている。それが、幼少期の親との関係が将来の配偶者選択に関係するという考え方だ。
研究では、自分自身に似た顔だけでなく、親の顔に似た特徴を持つ相手への選好についても検討された。
結果として、自己参照的な類似性の影響が中心だった一方、幼少期の親との関係が顔の類似性を伴う配偶者選択に部分的に関係する可能性も示唆された。
ただし、これは親と似た顔の人を必ず好きになるという法則ではない。幼少期の経験が大人になってからの対人認知に影響する可能性を示す研究上の仮説として理解する必要がある。
理由3:生活環境や社会的背景が似ている
顔の類似性を考える際、見落としやすいのが社会的な共通点だ。
人は、学校、職場、地域、趣味の集まりなど、日常的に接する人々の中からパートナーを見つけることが多い。同じような環境にいる人同士は、年齢、生活習慣、文化的背景、価値観などが近くなる場合がある。
こうした背景の共通性も、夫婦間の類似性を説明する要素の一つだ。
社会学では、同じような社会的属性を持つ人同士が結婚する現象も同類婚として研究されている。
重要なのは、顔が似ている人を意識的に探しているとは限らない点である。共通の環境で出会い、似た価値観や生活スタイルを持つ相手と関係を築いた結果、外見的にも似ている組み合わせが生まれる可能性がある。
理由4:顔の類似性が信頼感につながる可能性
2002年に学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に掲載されたLisa M. DeBruine氏の研究では、顔の類似性と信頼感の関係が調べられた。
実験では、参加者自身に似せて加工した顔と、本人に似せていない顔を用いて信頼ゲームを実施した。その結果、自分に似た顔の相手に対して、参加者が信頼を示す行動を取る割合が高くなった。
この研究は、顔の類似性が対人関係における心理的な反応に影響する可能性を示している。
ただし、信頼ゲームの結果が、そのまま恋愛感情や結婚相手の選択に直結するわけではない。顔の類似性が人間の社会的判断に関係する可能性を示した研究として捉えるのが適切だ。
【顔が似ているカップルの共通点】表情・しぐさ・性格は関係する?
夫婦の写真を見て「そっくり」と感じるとき、実際に目や鼻の形が似ているとは限らない。
人間は顔の輪郭やパーツだけでなく、表情、年齢の印象、雰囲気、身だしなみなどを総合的に判断している。夫婦が似て見える理由には、こうした複数の要素が関係している。
共通点1:笑い方や表情の作り方が似ている
長く一緒に過ごす夫婦では、会話中の笑顔や相手の話を聞くときの表情など、日常的な表情の出し方に共通点が見られる場合がある。
相手の表情に反応して笑ったり、同じタイミングで驚いたりすることは、夫婦の日常的なコミュニケーションの一部だ。
また、写真撮影時の笑顔や顔の向きが似ていると、第三者には顔全体の印象が近く映ることもある。
ただし、こうした表情の共通性が、骨格や目鼻立ちそのものを同じ形に変えていくという科学的な証拠とは区別しなければならない。
共通点2:年齢や雰囲気が近い
顔の類似性には、年齢の印象も関係している。
2018年1月18日に「PLOS ONE」に掲載された香港中文大学などの研究チームによる論文「Revisiting facial resemblance in couples」では、夫婦の顔の類似性を3つの実験によって検討している。
この研究では、髪型や眼鏡などの外見的な要素を取り除いた顔画像でも、夫婦の顔は非夫婦の組み合わせより似ていると評価された。
加えて、顔から受ける性格や年齢の印象についても、夫婦間で類似性が見られた。
つまり、顔が似ているという判断には、顔の造形だけでなく、見る側が受け取る年齢や性格の印象も関係している可能性がある。
共通点3:性格や価値観、生活習慣が近い
性格が似ている夫婦には、会話のテンポや物事の考え方、休日の過ごし方などに共通点が見られることがある。
例えば、次のような特徴だ。
- 物事を慎重に考えるか、直感的に決めるかという判断スタイルが近い。
- 人との付き合い方やコミュニケーションの頻度が似ている。
- 食事や運動、睡眠などの日常的な生活習慣が近い。
- お金の使い方や将来設計について共通の考え方を持っている。
- 笑いのツボや興味のある話題が共通している。
もっとも、夫婦の性格がすべて一致している必要はない。似ている部分と異なる部分を持ちながら、互いに折り合いをつけて生活する夫婦も多い。
2018年のPLOS ONEの研究で重要なのは、顔の類似性の判断に、見る側が感じる性格の共通性が影響していた点だ。実際の性格が顔の形を決めると証明されたわけではない。
共通点4:服装や髪型、身だしなみが似ている
夫婦が似て見える理由として、髪型や服装などの外見的な共通点も考えられる。
同じような生活環境で過ごす夫婦は、服装の好みや身だしなみの方向性が近くなることがある。写真で並んだときに色合いや雰囲気がそろっていれば、顔の印象まで似ているように感じられる場合もある。
ただし、2018年の研究では、髪型や眼鏡などの外見的要素を取り除いた状態でも夫婦の顔の類似性が認められている。そのため、髪型や服装だけで夫婦の顔が似ている現象をすべて説明することはできない。
【夫婦の顔が似てくる説の真相】昔の研究と最新研究で何が違う?
結婚後に顔が似てくるという説が広く知られるようになった背景には、1987年に発表された心理学研究がある。
この研究では、長年連れ添った夫婦の表情や感情の共有が、顔の類似性に影響する可能性が検討された。
1987年の研究が「顔が似てくる説」の出発点
1987年、心理学者Robert B. Zajonc氏らは「Convergence in the physical appearance of spouses」という論文を発表した。
研究では、12組の夫婦を対象に、結婚当初と約25年後の顔の特徴を比較した。
その結果、長年連れ添った夫婦の顔の類似性が高まるという傾向が報告された。
研究者らは、長期的な共同生活において、互いの表情をまねることや感情を共有することが、顔の印象に影響する可能性を考えた。
例えば、一緒に笑うことが多い夫婦では、笑顔を作る際の表情筋の動きや、表情の癖に共通点が生まれる可能性がある。
この考え方が、夫婦の顔は結婚後に似てくるという説の根拠の一つになった。
なぜ517組の研究では異なる結果になったのか
1987年の研究と2020年の研究では、対象となった夫婦の数や比較方法が異なる。
1987年の研究は12組という比較的小規模なサンプルだったのに対し、2020年の研究は517組という大幅に多いサンプルを用いている。
また、2020年の研究では、人間による主観的な評価に加えて顔認識アルゴリズムも使用し、異なる方法で結果を検証した。
こうした違いを踏まえると、1987年の研究だけで夫婦の顔が時間とともに似ていくという一般的な法則を確立するのは難しい。
2020年の研究は、より多くの夫婦を対象に長期的な顔の変化を調べたことで、従来の説に再検討を促した研究と位置付けられる。
顔が似ることと夫婦仲が良いことは同じではない
もう一つ注意したいのが、顔の類似性と夫婦関係の良好さを混同しないことだ。
夫婦の顔が似ているからといって、必ず仲が良いとは限らない。反対に、顔がまったく似ていない夫婦でも、良好な関係を築いている場合はある。
2018年のPLOS ONEの研究では、顔から受ける性格の印象が夫婦らしさの判断に影響する可能性が示されたが、顔の類似性だけで結婚生活の満足度や相性を判断できるという意味ではない。
顔の類似性は、あくまでも外見や印象に関する一つの特徴であり、夫婦関係の質を測る万能な指標ではないのだ。
【2026年最新の見解】顔が似てる夫婦について知っておきたい5つの誤解
ここまでの研究を踏まえると、夫婦の顔の類似性については、よくある思い込みと科学的に示された内容を分けて理解することが大切だ。
誤解1:結婚して何十年も経てば必ず顔が似てくる
これは科学的に確認された法則ではない。
517組の夫婦を対象にした研究でも、日本人夫婦20組を対象にした2024年の研究でも、時間の経過によって顔の類似性が高まる傾向は確認されていない。
誤解2:顔が似ている夫婦は性格も完全に同じ
顔が似ていることと性格が同じであることは別の問題だ。
顔から受ける性格の印象が似ている場合はあるものの、実際の性格や価値観まで一致しているとは限らない。
誤解3:顔が似ている夫婦は必ず相性が良い
顔の類似性だけで夫婦の相性や将来の関係を予測することはできない。
互いの価値観を尊重できるか、話し合いができるか、生活上の違いを受け入れられるかといった要素の方が、実際の関係を考えるうえでは重要になる。
誤解4:似た顔の人を好きになるのは遺伝子が理由
自分と似た顔への選好については、進化心理学や表現型マッチングの観点から研究されている。
しかし、夫婦の顔が似ているからといって、遺伝的に近い相手を意識的に選んでいると結論付けることはできない。心理的な親近感や社会的な出会いの機会など、複数の要因を考える必要がある。
誤解5:夫婦の顔の類似性はAIで完全に判定できる
2024年の日本人夫婦を対象とした研究では、人間による主観的な評価と顔認識アルゴリズムによる評価に違いが生じた。
人間が感じる「似ている」という印象には、顔のパーツの形状だけでなく、年齢や表情、雰囲気などの情報も含まれる可能性がある。
そのため、AIによる顔認識の数値だけで、夫婦の顔の類似性を完全に判断できるわけではない。
研究結果を読み解くための判断基準
夫婦の顔が似ているという話題を見聞きしたときは、次の3点を確認すると、科学的な事実と印象論を区別しやすくなる。
- 比較する時点:結婚当初と結婚後の写真を比較しているのか、現在の夫婦と他人を比較しているだけなのか。
- 評価方法:人間の主観的な判断なのか、顔認識アルゴリズムによる測定なのか。
- 調査規模:数組の夫婦を対象にした観察なのか、数百組を対象にした研究なのか。
この3点を押さえるだけでも、「夫婦は結婚後に似てくる」という説を、より正確に理解できるようになる。
【顔が似てる夫婦に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:顔が似てる夫婦は、もともと似ている相手を選んでいるのですか?
A1:研究では、夫婦の顔が結婚当初から似ている傾向が確認されている。2012年の能城沙織氏らの研究でも、自分自身に似た顔を持つ相手への選好が関係する可能性が示された。ただし、すべての人が意識的に似た顔の相手を選んでいるわけではない。
Q2:517組の夫婦を調べた研究では何が分かりましたか?
A2:2020年の研究では、517組の夫婦について結婚当初と20~69年後の写真を比較した。その結果、夫婦は結婚当初から似ている傾向があった一方、時間が経過して顔がさらに似ていくという仮説は支持されなかった。
Q3:日本人夫婦も結婚後に顔が似てくるのでしょうか?
A3:2024年の日本認知科学会第41回大会で発表された研究では、日本人夫婦20組を対象に調査が行われた。人間による評価とAIによる評価には違いがあったものの、どちらの方法でも結婚後に顔の類似性が増加する傾向は確認されなかった。
Q4:似た顔の人を好きになる心理には何がありますか?
A4:自分自身に似た特徴を持つ相手に親近感を持つ自己参照的な顔のマッチングが、その一つとして研究されている。また、幼少期の家族との関係や、共通する生活環境、社会的背景なども配偶者選択に関係する可能性がある。
Q5:夫婦の顔が似ていると仲が良い証拠になりますか?
A5:顔が似ていることだけで夫婦仲の良さを判断することはできない。顔の類似性と実際の夫婦関係の満足度は別の問題であり、価値観の共有やコミュニケーションなども考慮する必要がある。
Q6:夫婦の顔が似て見えるのは表情やしぐさの影響ですか?
A6:笑い方や表情、身だしなみなどが似ていることで、顔全体の印象が近くなる可能性はある。ただし、こうした共通点によって顔の骨格や目鼻立ちそのものが似ていくということは、主要な追跡研究では確認されていない。
まとめ:顔が似てる夫婦は「結婚後に似る」より「最初から似ている」傾向
顔が似ている夫婦は、もともと似た相手を選んでいるのか、それとも長い結婚生活によって似てくるのか。この疑問については、517組の夫婦を対象にした2020年の研究と、日本人夫婦を対象にした2023~2024年の研究が重要な手掛かりを与えている。
両者に共通するのは、夫婦の顔が似ている傾向はあるものの、結婚後に顔の類似性が高まるという明確な証拠は得られていない点だ。
その背景には、自分に似た顔への親近感、幼少期の経験、共通する社会的環境など、配偶者選択に関係する複数の要因が考えられる。
また、人間が顔の類似性を判断するときには、目鼻立ちだけでなく、年齢の印象や表情、性格についての印象も影響する。夫婦が似て見える現象は、単純な顔の形の比較だけでは説明できない。
【プロの結論】夫婦の顔が似ている現象を理解するうえで重要なのは、「顔が似ていること」と「結婚後に顔が似ていくこと」を混同しないことだ。2026年時点で有力な実証研究が示しているのは、夫婦の顔には結婚当初から類似性が見られる一方、長年の共同生活によって顔そのものが似ていくという説には、十分な裏付けがないという事実である。
これからも日本人を含む多様な集団を対象に、顔の類似性と配偶者選択の関係を調べる研究が求められる。夫婦が似ていると感じたとき、その理由を顔の造形だけに求めず、二人が共有してきた価値観や生活環境、表情や雰囲気にも目を向けると、この身近な現象をより深く理解できるはずだ。
主な研究資料
- Tea-makorn・Kosinski(2020)「Scientific Reports」517組の夫婦の顔の追跡研究。
- 能城沙織氏ら(2023・2024)日本認知科学会大会発表論文。
- Wongら(2018)「PLOS ONE」夫婦の顔の類似性と性格・年齢の印象に関する研究。
- Nojo・Tamura・Ihara(2012)「Human Nature」顔の同類婚に関する研究。
- DeBruine(2002)「Proceedings of the Royal Society B」顔の類似性と信頼感に関する研究。